有栖川有栖『妃は船を沈める』
- 作者: 有栖川有栖
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2008/07/18
- メディア: 単行本
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本書はフーダニットに焦点を絞った作品ではない。一部二部通しての最大の読みどころは探偵VS犯人の対決シーンにある。探偵・火村英生は推理によって事件の犯人を導き出すのだが、決定的な証拠というものが欠けていた。その犯人を追い詰めるために、わずかな痕跡から一歩一歩、着実に犯人を追い詰めていく。犯人いわく「砂の上に築かれた楼閣」のようにもろい推理だが、決して崩れることはない。トリックの奇抜さやアクロバットな論理展開でもなく、その着実な推理過程。それも本格ミステリの醍醐味のひとつであろう。また、犯人を追い詰める探偵像、というのは火村英生という探偵役には非常にはまっている。シリーズキャラクターの特性も十全に活きた佳作といえよう。