佐藤賢一『剣闘士スパルタクス』

剣闘士スパルタクス (中公文庫)

剣闘士スパルタクス (中公文庫)

 2007年5月購入。1年4ヶ月の放置。主人公・スパルタクスの剣闘士としての初試合の相手は熟練の戦士であった――本書の冒頭部から自分にとって強大な敵に立ち向かう勇敢な闘士という主人公像が提示される。初戦を勝利で飾り、そしてその後も勝利を重ねスパルタクスは剣闘士として一目おかれる存在となる。やがて彼は奴隷解放を旗印に掲げる反乱軍の頭目として担ぎ上げられるのだが、ここで冒頭と同様の構図がさらに大きな規模で提示されることになる。すなわち、ローマという世界最強の帝国に挑む戦士、という構図だ。作中ではこの、強者に挑み続ける戦士のイメージが常に付きまとい、そしてその挑戦が無謀であるものであっても、そんなスパルタクスを描く作者に筆致は好意に満ちている。好漢を好む佐藤賢一らしい描き方だ。