桜庭一樹『GOSICK? ベルゼブブの頭蓋』

 修道院に幽閉された少女・ヴィクトリカを救いに行く少年・一弥、というジュブナイル冒険ものの王道的ストーリーで、さらにそこにこれまで築き上げてきたヴィクトリカの生い立ちがらみのサプライズを用意した本書であるが、物語自体が現在パートと過去パートを交互に展開することでテンポが阻害された感がある。加えて、ラストは本書単体レベルでの大団円でとどめずに次巻へと同一地平で続く事件が発生し、着地点も磐石のものとはいえない状態での幕切れとなっている。以上の点から、シリーズものとしては結構重要な事件を扱っておきながらも、非常に散漫な印象を受けた一冊。せっかく前巻で対面を果たしたヴィクトリカとアブリルによる一弥をめぐる絡みも見られず残念だ。