蒼井上鷹『俺が俺に殺されて』
- 作者: 蒼井上鷹
- 出版社/メーカー: 祥伝社
- 発売日: 2007/06/01
- メディア: 新書
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荒唐無稽な前提条件を設定することによって、語り手は被害者、犯人、容疑者、そして探偵という四役を務めることになる。本格ミステリ的においしい設定の上で物語は展開していき、そこに寝取られ等の鬱要素をスパイスに加えている。だが、これらの設定・要素が効果的に機能しているかというとはなはだ疑問で、不条理展開にしても鬱展開にしても、本格ミステリ的展開としても突き詰めが甘い感がある。作者特有のシニカルでブラックな空気は健在であり、作者らしさは十分であるのだろうが、そこからもう一歩つきぬけてほしい設定の物語であり、残念だ。