貴志祐介『十三番目の人格 ISORA』
- 作者: 貴志祐介
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 1996/04/18
- メディア: 文庫
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多重人格者の物語であるのだが、千尋はあくまで由香里の視点によって語られるにとどまり、多重人格ものとはいえ彼女自身の内面での苦悩を掘り下げていくというようなタイプの物語ではない。代わりにもうひとつ別の要素として臨死体験をオカルト的に取り入れ、多重人格ネタと上手く融合させている。
ストーリーはこの二つの要素を両輪として進んでいくのだが、その推進力・吸引力はすばらしく、読み手に対するリーダビリティの高さはかなりのものといえよう。ページ数のわりにさくさく読めるが、逆にもう少し重厚感もがほしい気もする。