ロバート・シェクリイ『無限がいっぱい』

無限がいっぱい (異色作家短篇集)

無限がいっぱい (異色作家短篇集)

 2006年5月購入。2年1ヶ月の放置。収録されている短編の大半が常識的に考えたことや規制概念の逆を提示し、そこからストーリーを展開させていくタイプの作品だ。恋愛とは自然発生的な感情から生ずるものという認識とは逆の、人工的なSF装置によって発生させてしまう話「グレイのフラノを身につけて」。莫大なエネルギーをぶつけて消滅させてしまおうとするが、逆にすべてを吸収して成長し続ける怪物の話「ひる」。犯罪を未然に防ぐ機械を開発したもの、それによって不安がもたらされる話「監視鳥」。より深い愛情表現を身につけるために勉強したことによって失うもの「愛の語学」等々。
 いずれも発想の妙が光るが、なによりも、短い話の中で事態を二転三転させるストーリー運びの達者さが非常に際立つ。また、発想の性格上、シニカルな空気を帯びそうな設定もあるのだが、底意地の悪いブラックな雰囲気をほとんど感じさせない落ち着いた筆致は好印象だ。