西尾維新『化物語』上下

化物語(上) (講談社BOX)

化物語(上) (講談社BOX)

化物語(下) (講談社BOX)

化物語(下) (講談社BOX)

 上巻は2006年11月、下巻同12月購入。1年半の放置。阿良々木暦は吸血鬼に襲われたことが原因で、化物じみた異様な回復力を身につけた。しかもそれ以降、似たような怪異に遭遇することが多くなってしまった。体重をまったく感じさせない軽さを持つ戦場ヶ原ひたぎ、目的地に決してたどり着くことのない迷い子・八九寺真宵、「猿の手」によるものと思われる災いに見舞われた神原駿河、同級生によってかけられた蛇の呪いに苦しむ少女・千石撫子、自身の心の闇に悩まされる優等生・羽川翼……阿良々木の周囲で起きた様々な怪異を、彼自身を救ってくれた忍野メメの援けを得て解決していく。
 各短編にはそれぞれ怪異に見舞われる少女が登場し、彼女らと語り手たる阿良々木暦との絡みによってストーリーは展開していく。とはいえ、そのストーリーの幹となりうる部分は相当に薄く、代わりに物語世界を支えるのは阿良々木と彼女らの会話である。ギャルゲそのものの会話シーンが随所に登場し、その手の会話シーンが好きな読者には十分に楽しめる作品だ。
 注目すべきは、後書きによると本書は作者自身の趣味によって書かれたもので、仕事で書いたものではないと断言している点だ。作者の指向はラノベ的・漫画的ともいうべきキャラクターとその会話を描くことに向けられていることを自身ではっきりと示しているわけで、今後の作家的指針もこれに基づいていくことになるであろう。今現在の西尾読者にしてみれば、それは望ましいことであろうし、であるならば作者もファンも幸福であることは間違いない。