桜庭一樹『GOSICKs 春来たる死神』

 桜庭一樹は物語の結論部分よりも、なぜそうなるに至ったのかという過程、因果の「因」を描くことを重視している。冒頭で結末が提示される『砂糖菓子の弾丸はうち抜けない』や『少女には向かない職業』や時間軸のもっとも新しい箇所から語り始め、そこから過去のエピソードへと遡行していく『私の男』などといったように。
 本書はそのような作者の創作的指向にしたがって「GOSICK」というシリーズの「因」を提示した作品だ。しかも、連作短編仕立てで久城一弥とヴィクトリカ・ド・ブロワの出会いを描いたプロローグ〜第五章のあとに、さらなる物語の「因」となる「序章」をもってきている。シリーズとしては一外伝的挿話なのだろうが、作者の創作論を考える上では重要な位置づけの作品といえよう。