柄刀一『レイニー・レイニー・ブルー』

レイニー・レイニー・ブルー (カッパ・ノベルス)

レイニー・レイニー・ブルー (カッパ・ノベルス)

 2004年5月購入。4年の放置。七つの短編すべてで探偵役をつとめる人物は下半身に障害を抱えており、車椅子での生活を余儀なくされている。作品舞台も障害者に関係する病院といった場所であり、他の障害者が事件に関係したりする。ワトソン役も障害者介護を生業とする看護師だ。しかし事件やテーマ自体はさほどこれらの背景・設定が綿密に絡んでいるわけではない。
 病院で起きた自殺騒動と死体の消失「人の降る確率」、放火現場に残る他殺死体をめぐるアリバイ崩し「炎の行方」、神社の奉納舞のさなかに起きた毒殺事件「仮面人称」、マンションの一室で起きた密室殺人「密室の中のジョセフィーヌ」、一年前の転落死騒動の真相「百匹めの猿」、奇妙な書置きを残して失踪した外国人「レイニー・レイニー・ブルー」、老人の不注意によるガス漏れで起きたと思われた火事の裏に潜む真相「コクピット症候群」。いずれも魅力的な謎が設定され、かつ丁寧な推理展開による解決が用意されており、熱心な本格ミステリ読みを満足させられる水準にある。上記の理由で本格読み以外には辛い作品でもあるのだが。