松尾由美『いつもの道、ちがう角』
- 作者: 松尾由美
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2005/12/08
- メディア: 文庫
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いずれも現実にわずかな幻想的設定を投入し独自の世界を作り上げる、という作者が得意とする作風の作品である。ただし、ミステリというよりも幻想ホラーともいうべき内容のものが多く、明確な結論の出ている作品は少ない。同じ幻想風味ということでも例えば『安楽椅子探偵アーチー』のシリーズとはオチの方向性ははっきりと異なっている。したがって本格ミステリ読みとして松尾作品に馴染んだ読者には物足りなかったりラストに不安感を覚えるかもしれない。しかし作者の方向性を広げる好短編集であることも間違いなく、「奇妙な味」や異色作家系の作風が好みの読者は積極的に読んでいただきたい一品だ。