東川篤哉『館島』

館島 (ミステリ・フロンティア)

館島 (ミステリ・フロンティア)

 2005年5月購入。3年の放置。瀬戸内海の孤島に建てられた名もなき館。設計者であり館の主人である男が奇妙な死に様を遂げた。状況的には転落死であるのだが、死因はどうみても墜落死だというのだ。結局事件は解決しないまま半年が過ぎ、再び関係者が島に集まった。そこでは新たな殺人事件が発生するのだった。
 大胆なトリックが仕掛けられているのだが、館の見取り図を見るとある程度の想像は可能で読み手によってはトリックそれ自体の衝撃はさほどのものでないかもしれない。ただし、そのトリックを成立させるために設定された館の必然性、なぜ館には名前がないのか、など館自身に付随する条件はよく考えられており、作品自体の体裁は非常に丁寧に整えられている。メイントリックだけに注目して「うはwwバカミスwww」などと単に笑い飛ばしてしまうのではもったいなさすぎる作品だ。