大倉崇裕『七度狐』
- 作者: 大倉崇裕
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2003/07
- メディア: 単行本
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テーマとなるのは見立て殺人であるのだが、趣向は非常にユニークだ。見立ての材料とされるのが落語「七度狐」で、狐に七度騙される男についての話なのだが、七度繰り返される演出がしつこいということで、上演される際は最初の二度のみが詳しく語られ後は省略されている。初代古秋は残りの五回も飽きのこないように話を考えたというが、詳細はつまびらかにされていない。殺人はこの落語に倣い、男が騙された様子に見立てて行われる。しかも、見立ては二度では終わらずに以降も行われる。結果、事件が進行することによって見立てが判明、すなわち初代古秋の創作した「七度狐」が明らかになっていくのである。この倒錯的な趣向は殺人事件という見地で見ると明らかに吸引力に乏しく移る。しかし、殺人事件の謎と落語の創作部分の謎を同じ地平に配置することによって、作品に別の吸引力を与えている。落語ミステリとしては相当に魅力的な作品だ。