柳広司『漱石先生の事件簿 猫の巻』
- 作者: 柳広司
- 出版社/メーカー: 理論社
- 発売日: 2007/04/01
- メディア: 単行本
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柳広司は以前にも『贋作「坊っちゃん」殺人事件』において優れた漱石ミステリを発表した。本書はそれに次ぐ漱石ミステリ第二段である。前作が『坊っちゃん』の世界の後日談として描かれたのに対し、本書は実際の漱石自身を登場させるとともに『吾輩は猫である』の世界観を背景に持ってきて、独自の物語世界を作り上げている。そこでは前述した偏屈であるが魅力的な漱石が登場し、寒月さんや迷亭氏、多々良さんといった面々と面白おかしい会話を繰り広げたりする。一方で何らかのミステリ的趣向をこらした事件が発生し、漱石宅に居候する書生がその事件を解決することになる。全部で六つの短編・事件が収録されており、児童書向けレーベルで書かれたためかもしれないが、全体的に小ぶりでミステリ的には手ごたえは薄い。とはいえ漱石ものパロディ・パスティーシュとしてはよくまとまっており、読み心地はさほど悪くない。