伊坂幸太郎『陽気なギャングの日常と襲撃』

陽気なギャングの日常と襲撃 (ノン・ノベル)

陽気なギャングの日常と襲撃 (ノン・ノベル)

 2006年5月購入。2年の放置。人間嘘発見器の成瀬、演説の達人響野、正確無比な体内時計の持ち主雪子、スリの名人久遠という四人組の銀行強盗犯が巻き込まれた事件を描くシリーズの第二段。第一章で各キャラクターの人物像及び周囲の人間関係を記した簡易エピソードを持って来るという、購入したものの放置期間が長く前作の記憶が薄れてしまった怠惰な読者にも親切な構成になっている。圧巻は、そこで生じたエピソードを後のメインエピソードに関する有機的な構成要素として用いていることだ。伊坂幸太郎という作家は本書に限らずこのような小エピソードを後の伏線として絡めるのが非常に達者なのだが、特に本書ではその巧者ぶりが存分に発揮されている。また、このシリーズは伊坂作品中では軽妙な会話のやり取り、各人の特殊能力設定などもっともキャラクター依存度が高く、さくさく読めるので伊坂入門には最適であろう。