ロバート・ブロック『血は冷たく流れる』

血は冷たく流れる (異色作家短篇集)

血は冷たく流れる (異色作家短篇集)

 2006年3月購入。2年2ヶ月の放置。シニカルなユーモアあり、ブラックな作風もあり、サスペンス風味ありとこれぞ「異色作家短篇集」シリーズというべき趣向の短編を16編収録。そのなかでも「芝居を続けろ」「ベッツィーは生きている」のような芝居や俳優をモチーフにした作品と「こわれた夜明け」や「野牛のさすらう国にて」のような世界戦争の危機及びその勃発後の世界を扱った作品が多いのが特徴か。作者は20世紀半ばに活躍した作家であり、この時代は映画という娯楽が発達し、ひときわ輝いていた。同時に東西冷戦による危機感が高まり終末の訪れの恐怖が常につきまとっていた。作者はこのような20世紀の明るい面暗い面両方を取り入れた作品をものしており、時代の影響を色濃く受けた作家であるといえる。もちろん21世紀の現在、そういった時代性の衣を剥ぎ取った上で読んでみても十分に楽しめる質の高い短編集でもあるのだが。