小川一水『復活の地』1〜3

復活の地 1 (ハヤカワ文庫 JA)

復活の地 1 (ハヤカワ文庫 JA)

復活の地 2 (ハヤカワ文庫 JA)

復活の地 2 (ハヤカワ文庫 JA)

復活の地〈3〉 (ハヤカワ文庫JA)

復活の地〈3〉 (ハヤカワ文庫JA)

 3冊まとめて。大地震によって帝都が崩壊し、要人のほとんどを失ったレンカ帝国の様子を描いた3部作。物語の進行は群像劇の体を成しており、視点人物となる主要なキャラクターの所属は皇族とその侍女、復興院、陸軍、天軍(宇宙軍)、元老院、都令、議員、新聞記者、一般市民、他の惑星の要人などさまざまで、それら所属するものの事情や個人の思惑が震災からの復興を背景にして描かれている。権力が絡むものは自らの野心を満たそうと行動するし、諸外国の勢力は自国の立場をよりよいものにしようと自体の推移を見守り、時に介入する。無私の精神で復興に取り組むものの、思うようにはならずに苦しむ者もいる。災害にあってもくじけずに生きる者たちもいる。これらさまざまな角度・人物の描写により、災害から立ち直ろうとする「国」の様子が多角的に浮き出てくる。単なる災害によるパニックものはなく、あるいは無辜の市民たちが懸命に生きる姿を描くという外野から見ると無邪気に過ぎるものでもなく、国家間の政略がメインとなるわけでもない。タイトルにある通り「復活の地」で生きる人々を、その生きる姿を描いた力作だ。また、SF要素も単に広い宇宙の一惑星を舞台にした、という以外の意味もあるのだが、これはおまけに過ぎないであろう。