東野圭吾『同級生』

同級生 (講談社文庫)

同級生 (講談社文庫)

 高校生の宮前由起子が事故死した。ただの事故死ではなく、彼女の通っていた学校の女教師が関わっていたらしい。しかも、当事彼女は妊娠していた。由起子の同級生で、彼女を身ごもらせた相手である西原は事故の原因となった女教師を糾弾するのだが、その女教師が死体として発見されることに……
 表面上に現れるストーリーは「恋人を失った少年がその恋人の死の背後に潜む事情を追う」というような青春ミステリの王道ではある。しかしその裏に隠れており、最後まで明らかにされない真相はそのような王道とは異なったもので、非常に深刻、かつ陰鬱なものだ。もちろんその真相から受ける読み心地は非常に青春ミステリ的でありのだが、読者はそれまで見てきた角度とは違う視点からの事情を突きつけられることになり、その転調のギャップこそ本書の肝であろう。特に一見本筋とはかけ離れているように見える序章の扱いは絶妙で、作者の構成の巧さが光る。