三津田信三『シェルター 終末の殺人』
- 作者: 三津田信三
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2004/05/25
- メディア: 単行本
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読者には基本的に二つの謎が提示される。シェルターの外の世界はどうなっているのか。本当に核爆発が起きたのか、というものがひとつ。もうひとつは動機が存在しないと思われた初対面の人々の間で何故連続殺人が行われるのか、というものだ。
作者はこの二つのうち、内部の謎へと読者の興味を誘導していく。そして謎の解明に至ってはさらには三津田個人の問題としてより内なる方向へと焦点を絞っていく。仕掛けそのものはバカミスの部類で生真面目な読み手にとっては諸手を挙げて歓迎したいとはいいがたいものではあるが、ベクトルを内へ内へと導いていく誘導の手際は巧妙といえる。そのベクトルは謎が解明し、ラストではじめてはっきりと外部へと向けられる。結論を提示されぬにしても、その転換は鮮やかだ。