三津田信三『シェルター 終末の殺人』

シェルター 終末の殺人 (ミステリ・フロンティア)

シェルター 終末の殺人 (ミステリ・フロンティア)

 2004年5月購入。4年の放置。小説の取材のため個人所有のシェルター見学に訪れた三津田。持ち主の案内によって他の見学者と共にシェルターの入り口についた直後、空に巨大な閃光が浮かんだ。三津田たちは慌ててシェルターへと避難する。ところが、持ち主は無事に内部へと入ることはできず、さらには残った見ず知らずの面々の間で連続殺人が起きるのだった。
 読者には基本的に二つの謎が提示される。シェルターの外の世界はどうなっているのか。本当に核爆発が起きたのか、というものがひとつ。もうひとつは動機が存在しないと思われた初対面の人々の間で何故連続殺人が行われるのか、というものだ。
 作者はこの二つのうち、内部の謎へと読者の興味を誘導していく。そして謎の解明に至ってはさらには三津田個人の問題としてより内なる方向へと焦点を絞っていく。仕掛けそのものはバカミスの部類で生真面目な読み手にとっては諸手を挙げて歓迎したいとはいいがたいものではあるが、ベクトルを内へ内へと導いていく誘導の手際は巧妙といえる。そのベクトルは謎が解明し、ラストではじめてはっきりと外部へと向けられる。結論を提示されぬにしても、その転換は鮮やかだ。