貴志祐介『黒い家』

黒い家 (角川ホラー文庫)

黒い家 (角川ホラー文庫)

 恥ずかしながら、貴志祐介初読み*1。生命保険の支払をめぐる話。首吊り死体で発見された子どもは本当に自殺なのか? 保険会社に勤務の若槻は死体の第一発見者でもあったが、その状況、そして父親の態度に不振なものを感じ、調査に乗り出す。一方、保険金の支払を催促する両親による心理的なプレッシャーが若槻を苛み、ついに……
 作者の演出する恐怖は、生命保険の支払という非常に現代的な材料を用いて導き出されているものであり、その身近さと紙一重に存在している。超自然的な荒唐無稽さとは無縁であり、それゆえ怖さはひとしおである。デビュー作とは思えぬほど血に足のついた描写力もあって完成度の高い作品に仕上がっているといえよう。残りの積み本もなるべく早く読んでしまおうと思う。

*1:全作持っているが尽く放置。