若竹七海『バベル島』

バベル島 (光文社文庫)

バベル島 (光文社文庫)

 2008年1月購入。2ヶ月の放置。若竹七海のホラー短編集。巻末の千街晶之の解説にあるように、本書収録のホラーは二種類に大別される。「怪奇現象や不条理な出来事の怖さを扱った作品」と「妄執や狂気といった人間心理の怖さを描いた作品」とだ。そしてそのいずれもが作者の得意とする種類の作品である、と指摘されている。個人的好みをいうならば、断然後者であり、そして作品の質も満足いくものが揃っている好短編だといえる。
 また、収録作に語り手あるいは視点人物が実際に体験するものよりも、彼らが第三者から怪奇譚を聞く、といった形式を取っているものが多いものが目に付いた。意図的なものかどうかは不明だが、読み手と語り手/視点人物の距離を近くしようとする効果があったことは間違いない。