日向まさみち『本格推理委員会』

本格推理委員会 (角川文庫)

本格推理委員会 (角川文庫)

 2006年12月購入。1年2ヶ月の放置。主人公は探偵としての資質十分な推理力を有した人物と周囲に目されながら、探偵役たることを嫌がっており、そしてシスコン。幼馴染で気心の知れた少女もいる。友人として登場するのは二人。ノー天気男と理知的な少女。お嬢系の先輩と空手の達人美女という二人の先輩。理事長の娘にして主人公を掌の上の猿のごとく弄ぶ女教師。主人公の妹はもちろん兄を慕ってくれている……
 上記のような狙いのあざとすぎる設定のキャラクターが登場する青春ミステリ。これら登場人物は後書きを読む限りは作者の好みのようだが、(特にラノベ的な文脈においては)類型的以外の何ものでもなく、「こういったキャラクター、こういった設定を出しておけばお前らは喜ぶだろ」といわんがばかりの撒き餌が調理も何もされず素材のまま放り出されたようで、終始シラケ気分で読み進めることに。頑なに探偵役を拒む主人公が、そうなるに至った理由を重いトラウマであるにもかかわらずあっさり語りだした箇所は噴飯ものだ。タイトルの「本格推理」の4文字から期待するものもあったことが、マイナス評価に拍車をかけた。最後に設定がらみの大仕掛けがあったことが唯一の救いだ。青春もののミステリとしても似たような探偵像を築き上げた先行者米澤穂信と比べるとあまりにも稚拙でほろ苦さをほとんど感じることはない。設定頼みの登場人物たちが総じて薄っぺらい。
 以上、個人的には評価に値することはほとんどなかった作品であるが、類型的キャラクターによるやりとりを素直に楽しめる読者であるならば、それなりに読む価値はあるであろう。