西尾維新『トリプルプレイ助悪郎』

トリプルプレイ助悪郎 (講談社ノベルス)

　２００７年８月購入。７ヶ月の放置。ひとたび盗みに入ると三人の命を奪い去っていくために「三重殺の案山子」の異名を授かった怪盗・刑部山茶花の次なるターゲットは姿をくらました大作家・髑髏畑百足の最後の作品であった。予告状を受け取った、父と同じ作家となった百足の娘・一葉は編集者と共に百足の暮らしていた屋敷を久方ぶりに訪れた。険悪な関係の妹と忠実な執事、そして怪盗を捕らえるべくやってきたＪＤＣの探偵・海藤幼志が集うその屋敷で事件は起きるのだった……
　清涼院流水のＪＤＣシリーズのトリビュート企画の第二段。ＪＤＣという組織、そしてそこに属す名探偵という設定こそ用いているものの、もはや完全に西尾独自の世界を築き上げているといってもよい。やはり他作家の作品を用いた『ＤＥＡＴＨ ＮＯＴＥ ＡＮＯＴＨＥＲ ＮＯＴＥ ロサンゼルスＢＢ連続殺人事件』も同様に作品内で自分らしさを十分に主張して見せたのだが、この器用さは素直に感心できるものだ。ただし、本書に関しては元ネタとの関連性が希薄であるがために、トリビュートものとしての魅力には乏しいと思う。