桜庭一樹『GOSICK? ―ゴシック・その罪は名もなき―』

 ラノベのミステリーレーベルから刊行されており、かつ、謎とその解決という体裁がとられているが、むろん、本シリーズの読みどころはそこにあるわけではない。本書の肝はヴィクトリカと一弥、二人の少年少女である。しかし彼らの人物像のうわべをなでるだけのペラいキャラクターノベルとして描かれているわけではない。ミステリーの要素として登場する謎はヴィクトリカの生い立ちにダイレクトに絡んでくるもので、必然、その謎解きはそのままヴィクトリカの内面の掘り下げにつながっていく。かつ、事件に巻き込まれれ、それにともなう困難を乗り切ることでヴィクトリカ(及び一弥)は精神的に成長を遂げることになる。つまり本シリーズの本質は少年少女ものの王道ともいうべき成長物語であるといえる。