西澤保彦『ソフトタッチ・オペレーション』

ソフトタッチ・オペレーション (講談社ノベルス)

ソフトタッチ・オペレーション (講談社ノベルス)

 2006年11月購入。1年4ヶ月の放置。超能力がらみの事件を扱う「チョーモンイン」シリーズの短編集。念動力を用いた住居不法侵入と引っ越しの奇妙な関係「無為侵入」、曖昧な記憶に浮かぶ血飛沫と母の幻影、そして死者による超能力「闇からの声」、手料理を食べた相手が死んでしまう男の話「捕食」、豪邸で起きた大学の音楽仲間の殺人事件「変奏曲<白い密室>」、男が監禁された部屋に、テレポーテーションで次々と女性が運び込まれてくる表題作「ソフトタッチ・オペレーション」の5編を収録。
 本シリーズの基本構造は超能力がらみの事件を探偵役の保科匡緒が解決する、というものだが、シリーズが進むにつれてこの構造が変化していった。超能力がらみの事件そのものがクローズアップされ、保科自身がほとんど登場しないケースが出てきたのだ。また、人物関係ということに関しては、当初が保科と「チョーモンイン」の神麻嗣子、女性警部の能解匡緒の3人がメインであったのが、後に保科の別れた妻や別のチョーモンインメンバーが加わるなど、保科の周囲を彩る女性陣が豊富になっていった。このシリーズ進行によって見られた傾向が、本書においてはさほど見られない。5つの短編の推理パートはほとんどが保科と神麻嗣子二人のからみで構成されている。中には、保科自身が遭遇した過去の事件も扱われたりする。したがって多彩な女性キャラクターに注目して読んでいた読者には物足りないかもしれない。