浅田次郎『椿山課長の七日間』

椿山課長の七日間 (朝日文庫)

椿山課長の七日間 (朝日文庫)

 2005年9月購入。2年半の放置。本書における死後の世界では、よほどの重犯罪者でない限り、簡単な手続きで天国へ行くことができることになっている。したがって誰しもこの世への未練を断ち切って天国へ行くことを選択するのだった。しかし本書の主人公・椿山は家族と仕事のことが気がかりでこの世へ戻ることにする。なによりも身に覚えのない「邪淫の罪」の汚名をそそぐため、真実を確かめる必要があった。しかし、現世へと舞い戻った椿山の姿は生前とまったく異なる女性のもので、しかもあの世でのことを生者に告げることは固く禁じられていた。
 椿山の他に現世に戻ることを決心したのは二人。ヤクザの武田と聡明な子ども・雄太だ。椿山を含めた3人の視点で物語りは進行する。浅田作品らしく家族の絆*1・愛情がテーマとなっており、読み手の涙腺を心地よく刺激してくれる。

*1:ヤクザにおける舎弟関係といった擬似家族も含まれる。