アンソロジー『バカミスじゃない!?』

バカミスじゃない!?―史上空前のバカミス・アンソロジー

バカミスじゃない!?―史上空前のバカミス・アンソロジー

 2007年6月購入。8ヶ月の放置。小山正による冒頭の序文でバカミスの何たるかが懇切丁寧に解説されており、一部のバカミス偏愛者のみならずとも当ジャンルの肝を理解したうえで読み進めることができる。独自の方法論でメタを突き詰める作風の辻真先「異界殺人事件」で幕を開け、ハードボイルドのパロディといった趣からさらに……山口雅也「半熟卵にしてくれと探偵は言った」、パスティーシュすらバカミスであるとと主張する、バカミスの領域を貪欲に広げんとす編者の野心を邪推したくなる北原尚彦「三人の剥製」、ユニークなショートコントかくたかひろ「警部補・山倉浩一 あれだけの事件」、写真小説という意表をついた演出戸梶圭太「悪事の清算」、下ネタ系コメディの船越百恵「乙女的困惑 girlie puzzlement」と、一口にバカミスといっただけでは伝わらないバラエティ豊かな作品が。
 さらにラスト三篇は当ジャンルの重鎮ともいうべき鳥飼否宇鯨統一郎霞流一のそろい踏み。鳥飼のバカミスのためのバカミス「失敗作」、鯨の壮大なテーマのB級な演出「大行進」、バカミスキング霞による貫禄の「BAKABAKAします」。
 いずれもバカミスというジャンルに基づいた作品であるため当ジャンルのファンであれば身もだえして喜ぶのではないかというバカっぷりを見せてくれいており、それなりに楽しめる。ただし、バカミスであっても「ねらったバカ=計算」よりも「期せずして生まれたバカ=天然」を好むような読者にはさすがに胃もたれしそう。ついでに言うなら、船越百恵はもっと文章力を身につけてほしい。