司馬遼太郎『司馬遼太郎対話選集7 人間について』

 2006年9月購入。1年5ヶ月の放置。対談相手は今西錦司犬養道子高坂正堯山村雄一山崎正和。これらの識者と人類学的・民俗学的・宗教学的・医学的・そして文学的に日本と日本人、そして人間について語り合う。
 山村との対談での司馬は言う。
 

心について、ごく感想ふうにおもうんですが、たとえば風が吹いてきたときに、文学的にならない人は困るんです。ハンモックに揺られて手、風が吹いてきたな、いい気持ちだな、これは五月の風だなと。しかも上高地だとしたら、標高何メートルの、俗界から離れた風だ……といったことは、科学ではなく、全部文学に属する感情でしょう。分化されて専門化した世にいう文学ではなくて非常に自分の心が清浄になっていく気がするのは、文学的なことです。自分が文学化してる感じってあるでしょう。これが大事だと思うんです。そういう人が、信用できるんです。

 人間と文学のあり方を司馬流の言い回しで端的に表現した表現だ。ここだけでご飯三杯は軽くいける。