小路幸也『Q.O.L.』

Q.O.L.

Q.O.L.

 義父を恨む女性・くるみと兄を憎む男・光平、そしてなにやらいわくつきの家庭に育った男・龍哉の3人による共同生活は非常に快適だった。が、ある時、一丁の拳銃が彼らの手元に。くるみと光平の二人はその拳銃を利用してそれぞれ憎む相手に復讐をすることにしたのだが、思わぬトラブルが……
 家族との不和と和解というテーマを貴重にした作品であり、浅田次郎あたりが書いたらお涙頂戴の湿っぽさを前面に押し出してきたであろう。しかし、小路の筆致はそこまでのあざとさを感じさせず、作中人物とは一定の、程よい距離感を保っている。それゆえ薄味と捉えることも可能だが、作品のややご都合主義的なストーリー展開にとって感動ごり押しでは非常に鼻につくであろうから、この距離感は作風に相応しいものといえる。