森博嗣『少し変わった子あります』
- 作者: 森博嗣
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2006/08/30
- メディア: 単行本
- クリック: 23回
- この商品を含むブログ (128件) を見る
この設定を例えば北村薫が用いたのならば、女性たち、及び彼女たちと共に過ごす空間を情緒たっぷりに描いてみせることだろう。しかし、森博嗣はそういった趣を一切排除し、淡々と無機的に筆を運んでいく。作者の色がはっきりと打ち出されている作品で森博嗣の作り出す空気が好きな読者は純粋に楽しむことができるであろう。逆に情感を求める向きの読み手には非常につらい作品だ。
しかし本書は森作品であってもミステリとしての演出が用いられているわけではない点には注意が必要だ。このあたりを望んでいくと最終的に肩透かしとなる。ミステリレベルで必要な要素もここではそぎ落とされている。