歌野晶午『舞田ひとみ11歳、ダンスときどき探偵』

舞田ひとみ11歳、ダンスときどき探偵 (カッパ・ノベルス)

舞田ひとみ11歳、ダンスときどき探偵 (カッパ・ノベルス)

 2007年11月購入。2ヶ月の放置。男性作者が小学生あたりの少女にスポットを当てて話を書くことは非常に危険である。書き方次第では「こんな子どもいねーよwww」「ロリコンの妄想乙」などという罵倒を浴びせられる可能性があるからだ。少女描写のみにリアリティを求める行為は不毛かつ無意味だとは思うが、現実的とは別の次元、すなわち作品内の存在として違和感があるか否か、という意味でのリアリティは重要で、この観点で違和感を抱かざをえない作品というのは実際に存在する。このような罵倒リスクを回避するために、歌野晶午は以前に『女王様と私』という作品でとんでもない絡め手を使ってみせたのだが、本書は真っ向勝負で11歳少女を描いてきた。結果はそれなりに成功したといえようか。個人的には、少なくとも作品内存在としての違和感は感じられなかった、と思う。
 そんな少女が刑事である叔父の事件解決に意識せずとも力を貸すことになる、という短編が6作収録されている。作者いわく「ゆるミス」である本書は本格ミステリ色を前面に押し出したガチガチな作品ではなく、軽いノリで読めるものの、最後の最後できっちり仕掛けを施してくるあたりは、作者の面目躍如か。