角居勝彦『挑戦! 競馬革命』

挑戦!競馬革命 (宝島社新書 258)

挑戦!競馬革命 (宝島社新書 258)

 昨年、ウオッカで64年ぶりに牝馬によるダービー制覇という偉業を成し遂げた調教師・角居勝彦。彼は2000年に厩舎を開業して以来、わずか7年で実に7頭ものG?(あるいはJpn?)ホースを育て上げている。この成績自体驚異的だが、特筆すべきはその勝ち馬がいずれも異なる種牡馬であるという点だ。以下に掲げると、

名前 制したレース
デルタブルース ダンスインザダーク 菊花賞メルボルンカップ
シーザリオ スペシャルウィーク オークスアメリカンオークス
カネヒキリ フジキセキ ジャパンダートダービーダービーグランプリジャパンカップダートフェブラリーステークス
ハットトリック サンデーサイレンス マイルチャンピオンシップ香港マイル
フレンドシップ フレンチデピュティ ジャパンダートダービー
ウオッカ タニノギムレット 阪神ジュベナイルフィリーズ・ダービー
トールポピー ジャングルポケット 阪神ジュベナイルフィリーズ

 サンデーサイレンス系に偏りがちではあるが、その大元のサンデーはわずか1頭、その子どもでもそれぞれが異なる種牡馬である。種牡馬単位で一括して語るのは乱暴だが、それぞれの種牡馬には一応それなりに性格が異なり、それゆえ調教師としてみれば得意とする系統・そうでない系統が出てきても仕方のないところ*1だが、角居に限ってはそのようなことはなく、コンスタントに結果を出している。まだG?は勝っていないものの、種牡馬として決して成功しているとはいえないエリシオ産駒のポップロックで結果を出している点からも彼の育成のオールマイティーぶりはうかがい知ることができよう。昨年のリーディングトレーナー争いではまだまだ上位に顔を出すことのなかった角居だが、近いうちに上位をにぎわす存在になることは間違いない。
 その調教師・角居の現在に至るまでの足跡や競馬哲学を記したのが本書だ。彼は本書で3人の調教師に師事したことが現在の自身を作る大きな糧となったとしているが、その3人がタイキシャトルゼンノロブロイシンボリクリスエスなどを育てた藤澤和雄シーキングザパールアグネスワールドエアシャカールなどを育てた森秀行クロフネキングカメハメハダイワスカーレットなどを育てた松田国英と国内トップクラスの調教師である。彼ら3人から学んだことがこれ以上ないというくらい見事に実を結んでいる。学ぶということの意味を考えさせられる1冊だ。

*1:例えば、昨年のリーディングトレーナーの藤澤和雄などはブライアンズタイムの系統での出世馬は極めて少ない。