酒見賢一『中国雑話 中国的思想』

中国雑話 中国的思想 (文春新書)

中国雑話 中国的思想 (文春新書)

 2007年10月購入。1ヶ月の放置。

思うに劉備がいちばんわるい。

 本書はこのような一文で始まる。あの超傑作三国志物語である『泣き虫弱虫諸葛孔明』の発想の源がここでのぞき見られる。酒見ファンにしてみればそれだけでも満足できるというもの。
 しかし本書で語られる内容はそれだけにとどまらない。『泣き虫弱虫諸葛孔明』のエディターズノートの趣が強いのは最初だけで、以降の章では仙人やら孫子やら易やら、タイトルどおり中国に関する雑話が酒見的視点に基づき述べられていく*1
 後半の中国拳法に関する章は滅法面白く、これらを元ネタに小説化をすれば武侠風拳法小説が出来上がると思うのだが、はたして作者にその気があるのかどうか。いずれにせよ、本書自体は中国小説家としての酒見賢一の懐の広さを感じさせるお得な1冊となっており、ファン必見である。

*1:なお、関羽にも一章が割かれているが、これは『泣き虫弱虫諸葛孔明』における登場人物とは離れた、後に神格化された存在としての関羽についての記述となっている。