２００７年９月購入。２ヶ月の放置。江神二郎を探偵役に据えたシリーズの超久々の新刊。本シリーズは舞台設定においてはクローズド・サークルという点にこだわっている。今回一行は
新興宗教の聖地で起きた殺人事件に巻き込まれるのだが、とある事情で警察の介入を退けている。物語の見所としては殺人事件を巡る謎解きもあるのだが、そういったフーダニットよりもむ
しろクローズド・サークルを成立させた要因――
ホワイダニットとしての部分にこそくすぐられる。クローズド・サークルといえば、本シリーズの長い中断期間中にデビューした
石持浅海の名前が思い浮かぶが、本書のキモでもある閉鎖空間を成立させる要素に関しては、石持であれば前提条件として序盤で明示させてしまい、その上で物語を展開させているであろう。しかし有栖川はその要素を謎の核心部分に持ってきている。作品単体の評価とはまったく関係ないが、現代本格の最前線にいる作家の中の二人である石持と有栖川の作風、あるいは本各小説作法を思い、なんとなくニヤリとしてしまった。
