はやみねかおる『亡霊は夜歩く』

 2007年1月購入。9ヶ月の放置。学園祭を間近にひかえた亜衣たち三姉妹の通う虹北学園が舞台。学園には「時計塔の鐘が鳴ると、人が死ぬ」という伝説が伝わっているのだが、その時計塔の鐘が突如鳴りだし、亜衣のもとには「亡霊」と名乗る人物から事件と関係のあるであろう意味ありげなメッセージが届けられる。さらに怪事は続く。校庭に描かれた魔法陣に、空から降ってくる机……はたして「亡霊」の狙いとは?
 学園祭を舞台にしたり、怪しげな伝説を持ってきたりと、学園ミステリの王道ともいえるガジェットをこれでもかとぶち込み、かつ、ほのかに漂わせる恋愛(未満)の要素、謎の解決もすれたミステリ読者をターゲットにしたようなメタ的なものを用いず、真っ向から示してみせる。いかにもミステリを読み始めた子供向けな作品でありながらも、ミステリというものに対する作者の姿勢は誠実で、その丹念なつくりがいい歳したおっさん読者すらも十分にひきつける良作といえる。こういう作品を読むと安心する。