ジュール・ヴェルヌ『地軸変更計画』
- 作者: ジュールヴェルヌ,Jules Verne,榊原晃三
- 出版社/メーカー: ジャストシステム
- 発売日: 1996/05
- メディア: 単行本
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SFの祖、ヴェルヌの作品ということもあって使われるテクノロジー及びその理論は現代的視点で見ると牧歌的で微笑ましさを覚える程度のものである。しかし、地軸変更によって生じるであろう影響に対する予見は現代的で、ヴェルヌの他作品にも見受けられる、科学は万能ではなく利用法よっては人間にとんでもない不幸をもたらすというシニカルな考え方*1がここにも登場する。また、冒頭での北極の競売シーンでは各国の思惑によって思わぬ喜劇的シーンが生じているが、これもまた非常にシニカルである。
同時収録は「西暦二八八九年・アメリカの新聞王の一日」。こちらはスラップスティック風味の佳品。
*1:これはヴェルヌのみならず、ロボットの祖チャペックの『R.U.R』にも共通するSF黎明期から存在する思想であるといえる。