中西智明『消失!』

消失! (講談社文庫)

消失! (講談社文庫)

 本書を発表して以降、なんら音沙汰もなく*1「作者が消失」などと長いことネタにされていた作品。なお、近々復刊されるので、このネタともおさらばすることに。物語は三つのパートに別れて進んでいく。アマチュアバンドグループ内で起きたアイドル的存在・マリーの死を巡るパート、未亡人裕子の心の支えである裕二の死を巡るパート、ブティックを頻繁に訪れる純の死を巡るパートだ。いずれの事件も被害にあったのは赤毛の持ち主であり、そして犯人及び死体の消失が問題とされていた。被害者を結ぶミッシングリンクを結ぶ意外性、そしてそこから導き出される真相は驚愕。ここで用いられた手法は新本格初期のころによく見られ、かつ現代でもそれなりに用いられる類のもので新本格系の流れにあるミステリを好む読者にはお勧めである。

*1:その後、『 法月綸太郎本格ミステリ・アンソロジー』に短編が掲載された。