古龍『陸小鳳伝奇一 金鵬王朝』

金鵬王朝 陸小鳳伝奇シリーズ 1

金鵬王朝 陸小鳳伝奇シリーズ 1

 2006年5月購入。1年4ヶ月の放置。「四本眉毛の男」の異名を持つ遊興児・陸小鳳を主人公とした武侠小説。冒頭から江湖に名だたる武術の使い手に絡まれる展開。さらには滅亡した金鵬王朝再興をもくろむ美貌の公主に、略奪された財宝と亡命した皇子の探索を依頼される。この一連の息もつかせぬ怒涛の流れで一気に物語りに引きこまれる。しかも、この先の展開はいっそう力強い。次々と登場する江湖の英雄好漢は皆魅力的だ。特に自分の気が向かない限りは剣を抜こうとしない変わり者でかつ最強の剣士・西門吹雪*1の造形は素晴らしい。金鵬王朝がらみの謎を追う展開も、息をつく間を持たせぬほど二転三転し、読み手をぐいぐいと引きこみ、最後まで飽きさせることはない。なお、本書の抄訳版である『陸小鳳伝奇』は小学館文庫で刊行されながらも、あえなく絶版となってしまった。売り上げ的には苦戦するであろう作品を完訳版という形で再刊した訳者及び出版社には最高級の賛辞を贈りたいと思う。かくも面白い作品が日の目を見ないままであって良いわけがない。シリーズ続編も順次刊行されているようだし、このまま頑張って未訳作品を出していって欲しいところだ。

*1:「さいもんすいせつ」と音読みする。