佐藤友哉『1000の小説とバックベアード』

1000の小説とバックベアード

1000の小説とバックベアード

 2007年3月購入。5ヶ月の放置。佐藤友哉の作品は主人公が作者自身の投影として読まれることが多い作家だ。それは作品が私小説的というよりは、ラノベ的キャラ萌えの延長としての作者萌えに拠るところが大きい。本書もそういった特性に例外ではなく、主人公の片説家は作者自身に極めて近い境遇・性格の持ち主として捉えられることが大きいだろう。したがって作中で示される小説、あるいは文学に対する青臭いまでの前向きさは作品のみならず作者にとっても好意的に受け入れられるはずで、佐藤友哉という作家のファンにとっては十分に楽しめる作品に仕上がっているといえる。しかし、ひとたび作者と作品内主人公を切り離して考えた場合、どうであろうか。作中で示される青臭さはそのまま未熟さにつながり、なんともつまらない物語になってしまうのではないか。正直、一連の佐藤作品の中ではいちばん退屈であった。