三津田信三『作者不詳 ミステリ作家の読む本』

作者不詳―ミステリ作家の読む本 (講談社ノベルス)

作者不詳―ミステリ作家の読む本 (講談社ノベルス)

 2002年8月購入。5年の放置。偶然見つけた古書店で薦められるがままに購入した同人誌。『迷宮草紙』と名づけられたその本には7つの創作怪異譚が収められていた。三津田と友人の飛鳥信一郎が最初の短編「霧の館」を読んだ直後、その「霧の館」にちなんだ怪奇現象が二人に襲い掛かるのだった……
 短編を読む→奇妙な現象が起きる→短編で提示された謎を解く→怪異治まる→次の短編を読む……という、まるでステージクリア型のゲームのように物語は進行していく。ともすれば単調になりがちな展開だが、古書店主や飛鳥の妹などを絡めてメリハリを持たせることによってマンネリ感を巧く回避している。前作『ホラー作家の棲む家』が家を介して非現実が現実を侵食していく話であったのに対し、本書は『迷宮草紙』を通して非現実が現実を侵食する、という構成になっている。また、その構成から生じるラストの現実崩壊感はやはり前作に通ずるものがあり、2作を通して共通の登場人物を用いているものの、そのような現実崩壊感によってシリーズそのものが同一の地平に存在するのかどうかがあやふやになっており、現実崩壊感を互いに補完する形となっている。他作品は未読であるが、この感覚は三津田作品に共通するもののようなので、続けて読んでいきたい。