桜庭一樹『青年のための読書クラブ』

青年のための読書クラブ

青年のための読書クラブ

 2007年6月購入。2ヶ月の放置。作者が一貫として描き続ける「少女」という存在でもって長いスパンの時代を描く作品ということで、前作『赤朽葉家の伝説』と共通の手法がとられている。そして『赤朽葉家の伝説』が地方の製鉄一族の娘という狭い世界を扱ったのと同様に、本書ではミッションスクール内部という前作よりもさらに狭い世界を舞台としている。この狭い世界では少女と対をなすべきはずの少年があらかじめ除けられており、代わりに選ばれた少女が王子という少年の代替品として存在することになっている。『赤朽葉家の伝説』が辺境ともいうべき地方を舞台としつつも時代性を捉えるという意味では少女という鏡がそれなりに機能していたが、本書ではかように閉じた世界で展開する話であるがゆえに鏡としての機能はさほどはたしていない。むしろ、そういった時代性よりも各章の冒頭で引用される時代も国もさまざまな作品を作中に取り込むことによって生じる、現実とは別の物語世界を映す鏡としての機能が大きいように思う。したがって作品世界はひどく作り物じみている。だが一方でそのような世界に存在する少女たちの描写のなんと生き生きしたものか。