樋口有介『風少女』

風少女 (創元推理文庫)

風少女 (創元推理文庫)

 2007年3月購入。4ヶ月の放置。大学生の斎木亮は父危篤の報せを聞き、久しぶりに帰郷することに。故郷の地を踏んだ直後に亮は少女に声をかけられる。その少女は、彼が中学時代に好意を寄せていた川村麗子の妹・千里。千里は亮に麗子が死んだことを告げる。警察の見解では事故死だというが、千里も、そして話を聞いた亮も納得がいかなかった。彼らは独自で事件を再調査することにした……
 初恋の女性の死を再調査する、という基本構造は『初恋よ、さよならのキスをしよう』とまるっきり同じものであり、読後感も似ている。決定的に異なるのは主人公が中年のおっさん柚木草平ではなく、いまだ青春の渦中にある大学生の斎木亮に設定されていることだ。時間的にも人間関係的にも距離のある柚木と違い、どちらも近い位置にある亮は柚木ほど人間関係に達観していない感がある。