はやみねかおる『そして五人がいなくなる』

 2006年7月購入。10ヶ月の放置。岩崎家の隣におかしな男が越してきた。亜衣たちが挨拶に行くと、その男・夢水清志郎は自分のことを名探偵だという。夏休みを利用して遊園地に出かけた亜衣たちと夢水はそこで少女の消失事件に出くわす。犯人は伯爵と名乗る男で、伯爵はその少女だけでなく五人の人間を消して見せると予告をする。夢水は事件解決に颯爽と名乗り出るのだが……
 元来が子供向けレーベルに書かれていただけあって、名探偵と犯人の対決、人間消失のトリック、探偵役と助手役の和気藹々としたやり取り、事件の裏に潜む動機――作者はあくまで少年少女を読み手に想定して作品を構築している。もっとも、ミステリとしての根幹はしっかりとしており、いい大人にも十分に楽しめる作品だ。ただし一点、どうしても気に食わないところがある。それは作中における警察の扱いで、これは素人探偵ものの宿命ではあるのだが、探偵の引き立て役としての側面が悪い形で強調されていることだ。夢水は終始警察を小ばかにする。確かに名探偵に対して警察の能力は劣る。そしてそれはキャラクターの役割上仕方のないことでもある。だが、道徳論を振りかざすわけではないが、優れた者がそうでない者をからかう姿勢は、読んでいて決して気持ちのよいものではなかった。