はやみねかおる『そして五人がいなくなる』
そして五人がいなくなる<名探偵夢水清志郎事件ノート> (講談社文庫)
- 作者: はやみねかおる
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2006/07/12
- メディア: 文庫
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元来が子供向けレーベルに書かれていただけあって、名探偵と犯人の対決、人間消失のトリック、探偵役と助手役の和気藹々としたやり取り、事件の裏に潜む動機――作者はあくまで少年少女を読み手に想定して作品を構築している。もっとも、ミステリとしての根幹はしっかりとしており、いい大人にも十分に楽しめる作品だ。ただし一点、どうしても気に食わないところがある。それは作中における警察の扱いで、これは素人探偵ものの宿命ではあるのだが、探偵の引き立て役としての側面が悪い形で強調されていることだ。夢水は終始警察を小ばかにする。確かに名探偵に対して警察の能力は劣る。そしてそれはキャラクターの役割上仕方のないことでもある。だが、道徳論を振りかざすわけではないが、優れた者がそうでない者をからかう姿勢は、読んでいて決して気持ちのよいものではなかった。