瀬名秀明『デカルトの密室』

デカルトの密室

デカルトの密室

 2005年8月購入。1年9ヶ月の放置。10年前に死んだはずの天才科学者フランシーヌオハラが人工知能コンテストに姿を現した。しかも彼女は自分そっくりのアンドロイドを連れていた。少年時代にフランシーヌと接触したことのある尾形祐輔は彼女の姿を見て混乱する。フランシーヌの提案するゲームに巻き込まれた祐輔は何者かに監禁され、さらには祐輔のつくったロボットがフランシーヌを射殺してしまうのだった。
 本書は3部構成になっている。第1章では祐輔の監禁された部屋――いわゆる普通の密室を扱っているのだが、第2章以降は密室という本格ミステリのタームを哲学的領域まで高め、脳という密室に閉じ込められた人の意識を取り上げている。さらにはロボットに意識は宿るのか、という問題まで絡めつつ物語は展開していく。この非常に難解なテーマをエンターテインメントという土俵で取り上げ、きれいに着地も決めている。かなりの意欲作。あとは読み手の資質になるのだが、デカルトを知らなくても作品を楽しむうえではさほど問題ないとは思う。