平山夢明『独白するユニバーサル横メルカトル』

独白するユニバーサル横メルカトル

独白するユニバーサル横メルカトル

 まるでおとぎ話のような語り口で残酷な話を展開する「C10H14N2(ニコチン)と少年」で幕を開け、以降人肉食を扱う「Ωの聖餐」、同級生によるいじめ、あるいは鬼畜な義父に虐げられる少女「無垢の祈り」、芸術から感動を得ることを奪われた世界を描くSF「オペラントの肖像」、死刑囚の心理分析をSF仕立てかつミステリ的趣向を濃厚に描いた「卵男」、グロ満載「すまじき熱帯」、地図による一人称というユニークな演出で殺人鬼の行動を描いた「独白するユニバーサル横メルカトル」、人を解体する男に迫る狂気「怪物のような顔の女と溶けた時計のような頭の男」。以上8編。扱う素材が素材ゆえ読者を選ぶ短編集だが、1作1作がかなり濃密でよっぽどグロに対する免疫がない、というのではない限り一読の価値はある。