連城三紀彦『人間動物園』

人間動物園 (双葉文庫)

人間動物園 (双葉文庫)

 2005年11月購入。1年半の放置。都市機能が麻痺するほどの大雪の日に起きた誘拐事件。誘拐されたのは汚職疑惑の渦中にある大物政治家の孫娘。そして被害社宅には盗聴器がいたるところに仕掛けられており、警察は被害者との面会すらままならないのだった……
 盗聴器の存在によって被害者と警察を遮断したことにり、冒頭では「見えない被害者がどういう状態にあるか」という一風変わった推理劇が繰り広げられ、緊迫感高まる場面を演出する。そして中盤以降の「誘拐」という構造の大掛かりな変化には驚愕、そして感嘆。そもそも仕掛けが大きくなればなるほどそれを読者に隠蔽するのは難しくなるのだが、連城の筆をもってすればそれを巧妙に隠しつつもかくも精緻に作品を織り上げて見せるのだ。当代きっての技巧派ぶりは本書でもいかんなく発揮されている。すばらしい。