竹本健治『キララ、探偵す。』

キララ、探偵す。

キララ、探偵す。

 2007年1月購入。3ヶ月の放置。アイドルオタで童貞の大学生・乙島侑平のもとに届けられた一体のアンドロイド。彼の従兄にして天才科学者の発明によるそのアンドロイドは美少女型でなおかつメイド衣装を身にまとっていた。しかもそのアンドロイド・キララは探偵としての才能を発揮し、侑平が巻き込まれた事件を鮮やかに解決していくのだった。4つの短編を収録。

 設定を利用した事件やその解決といったミステリ的要素はまともであるものの、語尾が「〜ですう」でドジっ娘キャラのキララや「ウヒハ」という奇声を発する科学者といった人物に関する描写にとてつもない拒否反応を抱いた。メイドという旬な萌え要素を用いること自体は戦略的に間違ってはいないと思うが人格が存在しないアンドロイドにした場合、戦略的に狙いを定めた部分がすべてスポイルされてしまうのではないだろうか。キャラクターを立てるという意味での性格付けは十分にされており、気にならない人には気にならないかもしれない。が、個人的にはアンドロイドと人間という絶対的な違いがある以上、キララの性格付け及び性的要素を含む行動などは一線を引いてみてしまう。これは探偵役という要素でも同様で、灰色の脳細胞の持ち主と、高スペックCPUの持ち主ではやはり同様な視点で見ることはできない。

 ……などとキララというキャラクターの役割に対して否定的な目で見てしまったのだが、改めて考えてみるとそもそも「萌え」も「探偵役」も人格そのもとは別個に、役割を果たすための装置として存在せねばならない面もあり、そういう意味では人格などとは無関係のアンドロイドがそのポジションに就いている本書はある種の本質をついているような気がしないでもない。