島田荘司『ネジ式ザゼツキー』

ネジ式ザゼツキー (講談社ノベルス)

ネジ式ザゼツキー (講談社ノベルス)

 2003年10月購入。3年半の放置。大学の研究室で脳の研究をする御手洗潔のもとを、エゴン・マーカットという男が訪れた。記憶喪失である彼の書いた童話「タンジール蜜柑共和国への帰還」にある奇妙な内容が、過去を取り戻す重要な鍵になると御手洗は見抜き、驚愕の真実を導き出していく……

 いわゆる本格ミステリの楽しみは大まかに二通りに分かれると思う。ひとつは綿密に張り巡らされた伏線をもとに推理を組み立てていくもので、その論理の緻密さに首肯させられるようなもの。もうひとつは緻密さはさほどではないものの、論理を大胆に飛躍させることによって思いもよらない驚きをもたらすもの。島田荘司は後者に属するタイプの作品をものする作家で、奇想ぶり、そしてその奇想を表現する筆の力強さは圧倒的だ。本書も、ともすれば強引ともとれる論理展開でありながらも奇想を鮮やかに解体しており、その手際には引き込まれるものがあり実に魅力的だ。