二階堂黎人『カーの復讐』
- 作者: 二階堂黎人
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2005/11/25
- メディア: 単行本
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ミステリーランドのターゲット層の半分である現在のお子様に対して作者は、少年探偵団と並んで子ども向けミステリの定番ともいうべきルパンを主人公に用い、さらにはおどろおどろしい事件を材料として持ってきてそれを大仰な文章で飾り立てるというまさに王道ともいうべき戦略をとった。一方でかつてのお子様たちに対しては本人もうそぶくように、こちらも本格ミステリの王道たる某有名トリックの新機軸を用いることによってご機嫌を伺った。もっとも、結果として作者の意気込みは空回りに終わり、後の「俺ミス」発行という悲劇的とも喜劇的ともいえる展開を迎えることになってしまった。思うに二階堂黎人という作家は自身の信ずる領域にとどまる限りきわめて誠実な作家なのだと思う。しかし自ら定めた領域の一歩でも外に出てしまうとその誠実さは欠片も見られなくなり、結果として領域外の大多数の人間*1にはマイナスの印象を抱かせることになってしまう。とてもかわいそうな人だと思う。
*1:本人の言葉を借りるのであれば「本格無理解者」。