鯨統一郎『なみだ特捜班におまかせ!』

 2005年10月購入。1年半の放置。野暮な外見からは想像ができない天才的なサイコセラピスト・波田煌子は人間の深層心理を読み解く能力を買われて警視庁の臨時職員として犯罪心理分析官となる。煌子は未解決の七つの迷宮入り事件を特捜班のメンバーとともに解き明かしていくことになるのだが……

 いわゆる名探偵ものの犯人指摘の演出は単に犯人を明らかにするだけではつまらない。インパクトを与えるには奇をてらった演出が必要で、その意味ではこの波田煌子という探偵役はうってつけだ。プロファイリングによって導き出された犯人像は捜査員一同がぽかんとするほど一風変わったものでありながら、最終的にはその指摘から犯人が見つかる。この一連の過程は読んでいて非常に楽しい。鯨統一郎特有の重厚さとは一切無縁の軽さもここではいい方向に作用しているように思う。