酒見賢一『泣き虫弱虫諸葛孔明 第弐部』

泣き虫弱虫 諸葛孔明 第弐部

泣き虫弱虫 諸葛孔明 第弐部

 2007年2月購入。1ヶ月の放置。いわゆる三国志物語である大元の羅貫中の『三国志演義』と元ネタの史書の『三国志』(陳寿編・裴松之注)の比較から生じた疑問点・矛盾点をやけくそともいえるような酒見流解釈で描き出した爆笑物語。その解釈は明らかに無茶なものではあるものの、それに対して生真面目に指摘するのは野暮のきわみというもので、むしろここまで大胆な人物像を築き上げたことを天晴れとすべきであろう。

 その人物像に関してはこの作者、ノリノリである孔明は放火魔だし、劉備孔明直伝のイリュージョンを披露するし、関羽は『春秋左史伝』原理主義者だし、張費は殺人鬼だし、趙雲孔明の嫁サマの前ではもじもじしてしまうし、魯粛仁義なき戦いばりの広島弁でしゃべるし*1傑作なのは簡雍で、なぜか下ネタトークが大好きでそれを諸葛均に伝授したりするのだ!

 読むべし。元ネタを知っていればかなり楽しめる。また歴史ものかつかなりの長編ということで敬遠しているエンタメ系の本読みはおそらくかなりの損をしている。読むべし。それでも歴史ものは苦手だから……などと読まない本読みは貴重な読書体験を自ら放棄したことになると思うので、私はそういった偏向型読書子を心の底から哀れむ次第だ。読むべし。

 なお、本感想がエイプリルフールにアップされたことは偶然以外の何ものでもなく、過度に煽っていることに関しては洒落っ気などではなく本心からのものであることも念のため追記しておく。

*1:呉の気風の表現とされているがそれのみならず、「ご」を「くれ」と読ませた洒落でもあるのだろう